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2004.08.16

アンジェラの灰(Angela's Ashes, 1999, USA)

シャンテ・シネで単館上映していた、アランパーカー監督(エビータ)の新作映画は、ピューリッツァー賞作品の映画化。
アイルランドの極貧生活の中で子供達が夢を失わず、たくましく成長する姿を描いている。
音楽がジョン・ウィリアムズで、主役にも上手い役者を連ねており、鑑賞に堪える良い作品である。
なおこの原作を読んだ日本人が、舞台となったリムリックの街についてのHPを作成し、アラン・パーカー監督もそのHPで映画のイメージを作り上げたという。


NYでの生活に失敗したマクート一家は、アメリカで生まれた四人の子供達と一緒に祖国アイルランドへ舞い戻る。
元IRA党員だった父マラキ(ロバート・カーライル、「フルモンティ」、「ワールドイズノットイナフ」)に南アイルランドの人たちは職を与えてくれない。
たまに仕事を得ても、プライドの高い父はすぐ喧嘩して辞めてしまう。
トイレもなく、バケツの中に用を足す、貧しい生活の中で子供達は死に、また新しい子供達が産まれる。

長男のフランクは弟の面倒を看る優しい少年。
リムリックに移った頃は虐められたりしたが、父譲りの文才で学校でも一目置かれる存在になる。
アメリカ映画を見て育った彼は、生まれ育った国アメリカへの想いを厚くしていた。

アイルランドで仕事にありつけない父は、ロンドンへ出稼ぎに出て行く。
そのころ既に母アンジェラ(エミリー・ワトソン、「奇跡の海」「ほんとうのジャクリーン・デュプレ」)との関係は冷め始めており、やがて父は音信不通となってしまう。

一家の大黒柱となったフランクは、貧民階級のため上の学校へ行かせてもらえず、郵便配達の仕事に就く。
血気盛んな青年フランクだったが、配達先で結核を病む少女と出会い、恋に落ちたり、また高利貸しの老女に気に入られ、助手になったりと、さまざまな経験を積みながら、成長していく。
ある日、運命の女神が突然、フランクに微笑んだ。

描かれているのは、凄まじいほどの貧乏生活だ。
トイレはないし、雨ばっかり降って伝染病に罹ったり、食っているものは残飯ばかりの、乞食のような世界。
男達は不景気を全て英国のせいにしてしまい、それでいてわずかな稼ぎもギネスビールにつぎ込んで酔っぱらっている。
普通なら夢も希望もあったものではない。

しかし子供達は決して明るさを失わない。
もちろん子供達の中にも貧しさの意味を知り、夢を失い挫折していく子供もいるが、フランクは野心を忘れず、ついにアメリカ行きの夢を実現させてしまう。

著者フランク・マクートは、この小説、あるいは映画の中で自らの極貧生活を淡々と、しかし赤裸々に語ってみせる。
生きていくためには人は、どんなことだってやる。
そういう、与えられた環境の中で懸命に生きていく人々の姿をありのままに描き、人生のすばらしさ、たくましさを伝えてくれる。


エミリー・ワトソンは英国の性格女優で、実力的にもヘレン・ボナム・カーターを越えてしまったようだが、ここでもいい仕事をしている。
しかし彼女よりもロバート・カーライルの救いようがないほど情けない親父ぶりが印象に残った。決して憎めないのだ(笑)

SFX多用の非日常を描く映画も良いが、この作品のように、他人の人生をかいま見せて、自分の人生に足りないものや、埋もれて忘れていた事を思い起こさせるのも良いものだ。
とくにお金持ちになってしまった日本人には、薬になるだろう。
Jアービングの創作小説「サイダーハウスルール」とどっちが良いか、難しいところだが、やはり現実には小説は勝てない。見て損はない。


タイトルの「灰」の意味は、母アンジェラが、赤ん坊を暖かいお湯に入れてやることすらできず、かまどの灰をかき集めながら、ため息を付くシーンから来ている。

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