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2012年11月

2012.11.29

奇巌城の冒険 1966 東宝

東宝・三船プロ共同製作の怪作。
谷口千吉監督で、三船敏郎主演、舞台は遣唐使の頃のタクラマカン砂漠。
しかし原作は太宰治の「走れメロス」、そのうえ特撮映画と来ている。
はたしてターゲットは大人なのか子供なのか。
併映が駅前シリーズだと言うからある程度大人向けなのだろうが、内容はどう見ても子供向けだ。
若大将と併映していたマタンゴ路線なのか。

大角は敦煌で奴隷商人に売られているところを、遣唐使とともに中国に渡った円済が持ち金をはたいて助ける。
円済は仏舎利を日本に持ち帰るため、シルクロードを目指していた。
らくだを失った彼らはキャラバン隊についていき、円済と大角はついに砂漠の真ん中で仏舎利を見つけるが、隊は盗賊に襲われ、町に逃げ込むと円済は役人に捕まってしまう。
大角は彼を助けようと王宮に忍び込むが、やはり捕まり投獄される。
円済は大角とともに王に謁見して仏舎利を隣町にいる大角の弟に渡すことを許して欲しいと願う。
国王は極度の人間不信で、大角が明後日までに戻らないと代わりに円済を火あぶりの刑に処すと言う。

仙人や山婆が出てきて、妖術を使うあたりに、派手な特撮を用いている。
しかし谷口監督は似合わないことをやるから、何かおかしい。

町のセットは、そのままウルトラマン第七話「バラージの青い石」に流用されたそうだ。
そういえば黒部進、桜井浩子、平田昭彦というウルトラマン・ファミリーが出演していた。


監督 谷口千吉
脚本 馬淵薫
製作 田中友幸 根津博
撮影 山田一夫
美術 植田寛
音楽 伊福部昭

出演
三船敏郎 (大角)
中丸忠雄 (円済)
三橋達也 (王)
白川由美 (王妃)
佐藤允 (盗賊)
平田昭彦
若林映子
田崎潤
浜美枝
有島一郎 (仙人)
天本英世
黒部進
桜井浩子 


2012.11.28

しいのみ学園 1955 新東宝

福岡市で昭和29年にあった私立養護学校の話だ。

大学教授だった山本三郎は、二人の子供が小児麻痺になったことから全財産をかけて、障害児向けの学校を作る。
教え子だったかよ子や父兄も協力してくれて、学校は何とか軌道に乗る。
そんなとき鉄夫が父と継母に連れられて岡山から学校にやってくる。
継母はなさぬ仲で障害者を厄介払いしたくて、あえて遠くの学校を選んだのだ。
山本は怒るが、鉄夫が不憫で結局引き取ることにした。
鉄夫は山本の長男に頼んで父に手紙を書いてもらう。
しかしなかなか返事は来ない。
やがて鉄夫は病に倒れ、余命幾ばくもないことを医師から告げられる。
山本は事情を父に知らせ、返事を出してくれるように頼む。
鉄夫の臨終間際に父の手紙はやっと届いた。

清水宏監督の話題作で主題歌もヒットしたから、どういう作品だろうと思ったが、あまり良くない。
本音をぶつけてくるドキュメンタリー映画「ねむの木の詩」(1974、宮城まり子監督)とは大違いだった。
展開もあまりに平凡だ。
また素人子役を使わせたら日本一の清水監督なのに、ここで彼は河原崎健三ら名子役を使っている。
とくに皆が一斉にびっこを引いているシーンは驚いた。
リアリティが全く無い。

しかし、時代背景が違うのだ。
この時代はこういう映画でも人は感動して泣いたと思う。
見て見ぬ振りをしていた社会に障害者問題があるのだと知らしめたのだ。

この山本三郎の養護学校は上映の翌年、法人格を失う。
のちに昭和53年になって、しいのみ学園は社会福祉法人になるが、その間の事情をよく知らない。
おそらく映画化された後の方に数多くのドラマはあったと思う。
ご子息お二人はすでに亡くなっているが、三郎氏ご本人は100歳を越えて存命だそうだ。

(ちなみに宮城まり子の「ねむの木学園」は昭和43年に設立された。)

監督 清水宏
脚本 清水宏
原作 山本三郎
製作 永島一朗
撮影 鈴木博
美術 鳥居塚誠一
音楽 斎藤一郎

出演
宇野重吉 (山本先生)
花井蘭子 (妻文子)
河原崎建三 (息子有道)
岩下亮 (弟照彦)
香川京子 (渥美かよ子)
島崎雪子 (田中先生)
龍崎一郎 (村田三吉)
葉山葉子 (照子)

香川京子が歌う主題歌。

2012.11.25

家庭の事情 1962 大映

吉村監督と新藤脚本と聞いて、面白い切り口になるだろうと思ったが、全く違った。
長年勤め上げ定年・第二の人生を迎えた老父のお見合い話と、四人娘の恋模様を描くというありがちな話。
松竹家庭映画とどこが違うのかわからない。
増村監督に同じテーマで撮らせば良かったのに。

父平太郎は退職金150万円をもらい、貯金の100万円と合わせて、合計250万円を50万円ずつ四人娘と自分の五人で分けてしまう。
父は飲み屋の女に連れ込み旅館に誘われ、たかられるが、金をすでに分け与えてしまったというとぷいっと出て行ってしまう。
長女は会社の不倫関係で悩み、生活に疲れ50万円を開業資金にして安子の喫茶店を買い取る。
安子は父の見合い相手である。
次女はイケメン長田に騙され50万円を兄の会社の運転資金に使われてしまう。彼女のストーカーである石辺が何かと彼女に忠告するが彼女は聞かない。
四女はちゃっかり屋で50万円を元手に同僚に金を貸し利息を取るが、そのお金が縁で同僚が結婚することになり、心中穏やかでない。
三女は家に入って、亡き母の代わりに一家の面倒を看ていたが、結婚寸前まで行っては二度も裏切られている。

女優は豪華絢爛のはずなのだが、何かの併映映画なのかぱっとしない映画である。
でも三女役の三条魔子はきれいだったな。

唯一のオチは、渋谷東宝の前で待ち合わせをしようと言われて、平太郎が大映かと聞き直すところだ。
東宝にはおそらく植木等の「スーダラ節」(東宝映画で何度も劇中歌、主題歌として使われた)を劇中重要なところで借用させてもらったので、そのお返しだろう。


監督 吉村公三郎
脚色 新藤兼人
原作 源氏鶏太
製作 永田雅一
撮影 小原譲治
美術 間野重雄
音楽 池野成

出演
山村聡 (三沢平太郎)
若尾文子 (長女一代)
叶順子 (二女二美子)
三条魔子 (三女三也子)
渋沢詩子 (四女志奈子)
月丘夢路 (安子)
藤巻潤 (石辺)
田宮二郎 (長田)
藤間紫 (玉子)
杉村春子
小沢栄太郎

2012.11.21

「挑戦より」愛と炎と 1961 東宝

今をときめく石原慎太郎原作を、先日100歳の天寿を全うされた新藤兼人が脚本化した作品。
今でこそまるで右翼と左翼で立場を異にするが、昭和31年時点では、二人とも反安保、民族自決主義で呉越同舟していた。
1951年イランが石油の国有化を宣言したことに対抗して英国海軍がホルムズ海峡を封鎖する中、1953年出光興産の日章丸がイラン(映画の中ではアラクと呼ばれている)から石油を運び出した事件を軸に、太平洋戦争で傷ついた人々が懸命に立ち直ろうとする姿を描く。

戦後、伊崎は沢田社長の息子恭の戦友で介錯した間柄だったため、沢田の経営する極東興産に入社した。
しかし、生きる目標を失っていた彼は支社に左遷されそこでも心中事件を起こす。
沢田社長は石油メジャーと対立し銀行にも見放された本社へ伊崎を呼び戻す。
伊崎は沢田の娘早枝子と出会い、自らの手で死なせた恭の面影を彼女の横顔に見る。
やがて早枝子と愛し合うようになった伊崎は、民族主義の高まりを受け石油国営化を宣言してメジャーに海上封鎖を受けているアラクに興味を持ち、現地へ石油買い付け交渉に飛ぶ。

早枝子役の司葉子が美しい。
耐える女、まもる女のイメージが強い彼女だが、この映画ではそのイメージをひっくり返している。
美人は飽きやすいものだが、彼女も生きる情熱を取り戻してデートに遅刻する伊崎をつまらないと言い放つ。
そのシーンが何故か心に残った。
司葉子にそう言わせた脚本家はいなかったのではないか。

友人(水野久美)を死に追いやった伊崎を恨みに思っていた高峰役の白川由美も仕事に打ち込む伊崎を見て、別の気持ちがわいてくる。
彼女と伊崎が二人で夜の道を歩いているとき、右隣を歩いていた白川がある拍子に左隣を歩くようになる。
近づきかけていた二人の距離が結局交わらないと思い知らされる瞬間だ。

三橋達也は二人の女に翻弄されながら、日本とイランの独立に命を賭ける伊崎を好演。
「廓より」無法一代、洲崎パラダイス赤信号に続く代表作だと思う。

森雅之が出光佐三という日本の大経営者を演じるため、いつもより色黒にメイクして正義漢あふれる精悍なイメージを出していたのも新鮮で良かった。
黒澤明監督「悪い奴ほどよく眠る」(高齢の公団副総裁役)の撮影が先行していただろうから、意識して真逆な路線にとったようだ。

しかし総じて見ると、脚本と演出は成功したと言いがたい。
実話の映画化にもかかわらず上映時間が短く、はしょりすぎている。
したがって編集で相当な量がカットされているはず。
完全版があるのであれば、復活させてもらいたい。
山崎豊子「不毛地帯」(伊藤忠商事に関する実話をベースにしている)をはるかに上回る経済映画になる資格があっただけに惜しまれる。


監督 須川栄三 (「きみも出世ができる」)
脚色 新藤兼人
原作 石原慎太郎
製作 藤本真澄
撮影 小泉福造
美術 阿久根巖
音楽 佐藤勝

出演
三橋達也 (伊崎)
司葉子 (沢田早枝子)
白川由美 (高峰啓子)
森雅之 (沢田社長)
藤田進 (船長)
久保明 (内海)
志村喬
田島義文

最近、再び出光興産初代社長出光佐三(さぞう)が注目されている。
百田尚樹が伝記「海賊と呼ばれた男」を出版した。
好評だ。

2012.11.18

独立愚連隊西へ 1960 東宝

不良映画だとばかり思っていたら、戦争映画だった。
加山雄三の記念すべき初主演作。
正直言って、当時の方が格段に演技がうまかった。

太平洋戦争中、中国で戦死公告が出てしまいながら、生き残っていた左文字少尉以下の小隊は厄介者扱いをされて戦地から戦地へと追いやられる。
行軍中、八路軍に四方を囲まれる。両軍ともマラソン状態になってしまう。
疲れ果てた八路軍の梁隊長は軍使を出して、また元気なときに戦おうと左文字少尉と別れる。
今回の任務は壊滅した日本軍の軍旗と旗手の行方探しである。
八路軍の攻撃を受けながら、何とか旗手と軍旗を見つけ、旗手を世話をしてくれた中国娘と逃がしてやる。
なおもゲリラの包囲を受けるが、左文字少尉と戸山軍曹の機転で切り抜ける。
夜が明けて彼らを待っていたのは、八路軍の大部隊と梁隊長だった。

何人かは死ぬけれど、あまり殺し合いをする映画ではない。
岡本監督らしいコメディタッチだ。
加山雄三も良かったが、当時大人気だった連続テレビドラマ「コンバット」のサンダース軍曹(ヴィック・モロー)を意識したのか、佐藤允がやたらと格好良い。
さらに堺左千夫、江原達怡、山本廉にとっても代表作と言える出番、台詞の多さだった。
このように女っ気が少ない男臭い映画だが、さすがは岡本監督、戦争批判を込めた秀作である。

でも滑稽で人間味のある梁隊長役を、外人物まねを得意としていたフランキー堺が好演している。
たとえばタモリを梁隊長役にしていま、こんな(中国から見た親日的)映画を作ったら、中国は怒るだろうな。

なお、岡本監督の前作「独立愚連隊」とは話のつながりはない。


監督 岡本喜八
脚本 関沢新一 岡本喜八
製作 田中友幸
撮影 逢沢譲
美術 阿久根巖
音楽 佐藤勝

出演
加山雄三 (左文字少尉)
佐藤允 (戸山軍曹)
堺左千夫 (神谷)
江原達怡 (小峯衛生兵)
山本廉 (関曹長)
中谷一郎 (早川)
平田昭彦 (大江大尉)
久保明 (旗手)
フランキー堺 (梁隊長)
田島義文 (参謀)
中丸忠雄 (八路軍に投降した中尉)
水野久美 (従軍看護婦)
横山道代 (従軍慰安婦)

2012.11.16

かもめ食堂 2006 日本・フィンランド

フィンランド映画のような日本映画。
フィンランド人と知り合いたくなる作品もである。

サチエはヘルシンキで突然おにぎりのレストランを開く。
しかし、フィンランド人は遠巻きに物珍しげに眺めるだけで、入ってきたのはガッチャマンの歌詞を知りたがる日本お宅の青年だけ。
サチエは街で観光客のミドリと偶然出会うが、彼女がガッチャマンの歌詞を覚えていて二人は意気投合した。
ミドリがお店を手伝うようになってから、少しずつお客は入り始める。
ある日から、マサコという中年女性が毎日客として訪れるようになる。
航空会社が彼女の荷物を紛失して困っているという。
何日かたってついに発見されるが、中身は何故か山で採集したキノコだった。
マサコもヘルシンキになじんで、かもめ食堂を手伝うようになる。
そんな中、いつもお店をにらみつけているフィンランド人の中年女性がいた。

「やっぱり猫が好き」の三人姉妹から室井滋を抜き、片岡はいりを入れた組み合わせ。
三人の醸し出す雰囲気は独特であり、これぞ日本的といえる。
フィンランド映画の一種の「やる気のなさ」とも合っている。
もし室井滋を起用してしまうと、この雰囲気は出せなかった。

撮影、美術はフィンランドスタッフに任せているのも素晴らしい。
人の演技にフィンランドの自然や家具が調和していた。

かもめ食堂は、日本人が経営しているわけではないが、実際にヘルシンキに存在して営業しているそうだ。


監督 荻上直子
脚本 荻上直子
原作 群ようこ
撮影 トゥオモ・ヴィルタネン
美術 アンニカ・ビョルクマン
音楽 近藤達郎
主題歌 井上陽水


出演
小林聡美 (サチエ)
片桐はいり (ミドリ)
もたいまさこ (マサコ)
ヤルッコ・ニエミ
タリア・マルクス
マルック・ペルトラ


2012.11.14

ほらふき丹次 1954 新東宝

藤田進が自ら惚れ込んだ芥川賞作家の原作の映画化権を買い取り、新東宝に売り込んだ作品。
俳優座が協力。

大正期の北海道、丹次は息子と二人でつましく暮らしていた。
漁師の豊吉の家に脱獄犯が侵入し、豊吉を射殺して山に逃げる。
しかし動物用の罠にかかったところを丹次に見つかり御用となる。
丹次は巡査の池谷から表彰される。
豊吉には娘はつ子がいたが、なついていた丹次のところに引き取られる。
はつ子は美しい娘に育つ。
しかしはつ子を狙う村の総代は、いろいろと嫌がらせを仕掛けてくる。

いまから見ると何がしたかったのだろうと思う作品。
素朴な北海道の大自然とガンアクションで見せたかったのかな。
時代を考えると、西部劇の日本版だろうと思う。
しかし最後に藤田進と東野英二郎が向かい合って打ち合うシーンはあまりどきどきしない。
藤田進の熱意が中川監督にうまく伝わらず、原作の良さを生かし切ったとは言えないと思う。


監督 中川信夫
原作 寒川光太郎
脚色 八木隆一郎
撮影 河崎喜久三

藤田進 (百姓丹次)
安西郷子 (猟師の娘はつこ)
東野英治郎 (巡査池谷)
稲葉義男 (脱獄囚)
永田靖 (部落総代)
左ト全 (部落民)

2012.11.11

心に花の咲く日まで 1955 大映・文学座

失業中の親子三人の姿を淡々と描いた作品。
文学座が製作、総出演(63年に劇団雲と劇団NLTに分裂する以前のまさにオールスター)しているが、監督は佐分利信で主演は宝塚出身の淡島千景。

三吉は船舶技師。
不況の余波で職を失って、それ以来毎日「田園交響楽」をかけて赤ん坊とぶらぶらと過ごしている。
生計は主に妻のすず子の裁縫仕事でまかなっていた。
となりに人妻と保険外交員が駆け落ちしてきてから、話し相手ができて賑やかになった。
すず子は母と姉が住む家へお仕立てものを届けに行く。
姉の知り合いのご婦人が注文してくれたのだ。
ところがその婦人がすず子の仕立てを気に入らず、やり直しとなる。
くさくさしてすず子は夫に当たるが、夫はのれんに腕押しである。

ただ失業者の日常を淡々と描く。
佐分利信の責任もあるのだろうが、ずいぶん実験的な映画だ。
往年の文学座ファンにはたまらないだろうが、俳優座ファンは面白くも何ともないのではないのかな?
劇団民藝と新藤兼人監督は主義主張をはっきりさせた映画を撮ったが、文学座は個性が足りない。

ただ、加藤治子のヤンキーな娘姿には感動した。
いまでも不良婆の演技をするが、昔の方が数倍うまかった。
地はああいう人なのだろう。


監督 佐分利信
脚本 田中澄江 井手俊郎
原作 田中澄江
企画 吉田千恵子
製作 文学座
撮影 藤井静
美術 松山崇

出演
芥川比呂志 (失業中の笹山三吉)
淡島千景 (妻すず子)
杉村春子 (となりの愛人森下さん)
仲谷昇 (となりの保険外交員志野君)
長岡輝子 (すず子の母山崎とき)
文野朋子 (すず子の姉でバツイチの山崎たか子)
加藤治子 (おきゃんぴーな岸フミ)
丹阿弥谷津子 (同級生で愛人をしている原)
宮口精二 (するめ売りの鈴木)
賀原夏子 (スタイル自慢の富永夫人)
三津田健 (歌う郵便屋)

2012.11.07

生きとし生けるもの 1955 日活

何の気なしに見ていたが、最後には泣いてしまった。
はじめは名も無い小市民が起こした小事件を描くつまらない映画と思ったが、途中から労働争議がらみの共産党映画かと思い、最後になって実は山本有三風の感動作だと気づく。
吉永小百合、山口百恵といったアイドル映画の巨匠西河克己の日活第一回監督作品だそうだ。

曽根鉱山経理課に勤める民子は、賞与支給日にある社員の賞与を1万円少なく詰めてしまう。
その人は自ら申し出たが、現金残高を調べると誤差はなかった。
すると誰かの袋に1万円多く入れたことになるが、誰も申告してくれない。
結局、民子が責任を取って1万円を弁償した。
靖一郎はその夜、賞与を見て1万円多いことに気づく。
一度は会社へ出向き返そうと思うが、弟令二の学費を滞納させていた靖一郎は、結局ねこばばしてしまう。
良心の呵責に悩む彼は民子を呼び出して真実を語ろうとするが、友人の恵美がお見合いと勘違いしたため、何も言えなかった。
そして、デートを重ねる内に彼は民子を愛してしまった。
ところが民子は社長の息子夏樹に秘書として抜擢され、そのうえプロポーズまでされてしまう。
靖一郎はその事態に至っても、民子に何も言えない。
正義漢の強い弟令二が真相に思い当たって兄を詰問しているところを民子に見られて全ては露見する。
令二は春から曽根鉱山に就職して北海道の炭鉱に行かされる。
彼は大学卒の社員なのに組合活動にのめり込み、ストライキを先導する。
結局、ストは妥結するが、令二は会社に全責任を取らされて会社に辞表を提出する。
最後に令二は交渉相手だった夏樹と社長のもとに乗り込み、兄と民子の仲を割こうとする夏樹の横暴をぶちまける。
しかしそこで顔見知りの老人遠藤から意外な真実を聞くことになる。


西河は松竹大船の助監督時代からシスター映画(併映用の中編映画)の監督をしていたが、長編映画の監督はこれが初めてだった。
松竹はそれだけ層が厚かったのだ。
しかし長編第一作で、こんなに難しい作品を撮るとはただ者ではない。

山本有三の未完の大河小説を黒澤映画の名脚本家橋本忍が脚本化して、さらにそれを監督の西河自身が脚色しているそうだ。
山本有三は「路傍の石」もそうだが途中で作品を投げ出す癖があるようだ。
橋本、西河脚本はそれを見事に完結させている。
この原作は映画になるべくして生まれてきたのだ。

クレジット順での主役は三國連太郎だが、この映画にはっきりした主役はいない。
しかし群像劇でもない。
それぞれがはっきりとした存在価値を持っている。
「生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける」(紀貫之、古今和歌集仮名序)
原作の題名に当てはまるように、監督は一人一人を丁寧に描き分けている。

三國連太郎はしがない労務担当のサラリーマン役で、最後まで優柔不断だ。
いつもの三國なら爆発しそうなものだが、今回は押しが弱くて一切控えめである。
だけど最後には、そんな自分の殻を打ち破りたいと思う。
社長役の山村聰は息子に厳しいようでいて寛大な父親を演じ、一方その息子役の山内明は若くてとんがった野心を抱く資本家である。
三國と山内にはさまれた民子役の南寿美子は結局三国が決意するのを待ち続けるつもりだ。
あき子役の東谷暎子は山内を愛し、彼の心が民子から自分に向く日をいつまでも待っている。
若き日の北原三枝は勝ち気でしっかり者だが、彼女さえ勘違いしなければこんな事態には至らなかった。
笠智衆は何故日活映画に出ているのかわからなかったが、実は社長と弟をつなぐキーパーソンであり最後に一番美味しいところを独り占めしてしまった。
ほかにも轟夕起子、村瀬幸子、宇野重吉が顔を出す。

組合運動に挫折する弟役の三島耕(「太陽の季節」)を監督は重視していたのではないかな。
この頃の三島耕は筋は通っているが思い通りにならずやけになる青年役がぴったりだ。
兄に変わって不平不満を山内にぶつけるが、最後に笠智衆に「若者がいつまでも後ろ向きになるな」とやんわり諭される。
世の中も組合運動、社会主義運動全盛期から朝鮮戦争が始まり神武景気、岩戸景気へと移っていった。
そういう時代の曲がり角の映画であった。

若い女優三人のうち北原三枝以外の南寿美子(「月がとっても青いから」)と東谷暎子(「太陽の季節」)をよく知らない。
二人とも日活映画には出ていたが、東谷は60年代にはもうスクリーンから消えたようだ。
南は主役を演じたこともあるが、ロマンポルノでもバイプレーヤーとして出演していた。
二人とも好みなのだが、日活のアクション映画には合わなかったのだろう。


監督 西河克己(吉永小百合版と山口百恵版の「伊豆の踊子」)
脚色 橋本忍(「羅生門」) 西河克己
原作 山本有三 (「路傍の石」)
製作 岩井金男
撮影 高村倉太郎

出演
山村聡 (社長・曾根周作)
山内明 (その息子・曾根夏樹)
東谷暎子 (息子を愛する香取あき子)
轟夕起子 (社長の相談相手・南ゆき子)
三國連太郎 (優柔不断な伊佐早靖一郎)
三島耕 (正義漢の弟・伊佐早令二)
南寿美子 (兄を愛する菅沼民子)
村瀬幸子 (民子の母さと)
北原三枝 (社長秘書八代恵美)
笠智衆 (遠藤老人)

2012.11.04

赤線地帯 1956 大映

売春防止法改正直前の赤線地帯(原作では洲崎、映画では吉原)の様子を描いた作品。
法律ができた後に生まれた人間としては、神近市子や市川房枝が尽力したと言う話しか伝わってこない。
そういう意味でこの映画は貴重な資料である。

ミッキーが神戸から流れて吉原の特殊飲食店「夢の里」に流れ着いたところから始まる。
店の経営者は田谷夫婦で、娼婦の最年長はゆめ子、子持ちで通いのハナエ、若いのにしっかり者のやすみ、やり手婆のおたねなどが働いていた。
すでに世の中は売春反対運動真っ盛りで、田谷は国会対策に頭を悩ませている。
しかも、より江という娼婦は借金を踏み倒し足抜けして結婚してしまう。
さらにミッキーの父が娘を連れ戻すため上京するが、逆に娘に言いくるめられて追い返されてしまう。
ハナエの亭主が病気と生活苦で自殺を図るが、何とか助かる。
より江は亭主と別れ、また夢の里で働き始める。
そんなドタバタした日々の中で、やすみだけは男から巻き上げた金を元手に娼婦たちに高利で貸して、蓄えをさらに増やしていた。
しかし、逆上した男がやすみに暴力をふるい、警察沙汰になってしまう。
国会では今回も売春防止法案は否決された。
やすみはお店を辞め、蓄えで夜逃げした布団屋の権利を買って商売を始めている。
やすみの代わりに新人しず子が客を取ることになった。
彼女が生まれて初めて、お客に声を掛けるところでこの映画は幕を閉じる。


溝口健二は戦後になって現代劇をあまり撮らなかったが、この映画はリアルタイムのネタに挑戦した作品である。
この映画の公開後に溝口健二監督は亡くなったため、この作品が遺作になる。
1952年、53年、54年と三年連続でヴェネチア国際映画祭で国際賞や銀獅子賞を獲ったばかりだったから、彼を失って日本映画界の悲しみは大きかっただろう。

彼の死後二年たって、売春防止法は施行された。
しかし、女性の悲劇はそれ以後もなくならなかった。
そのことまでこの映画は、しっかり予見している。

見所は女優同士の火花散る競演ぶりだ。
溝口監督でなければ、三益愛子、木暮実千代、京マチ子、若尾文子という四世代を代表する大女優を一つ炬燵に座らせることなど不可能だった。

驚いたのは、若尾文子が娼婦役を演じていることだ。
確かに性典映画出身だったから、若い汚れ役は当時の彼女向きだったのだが、今の若尾文子の大物ぶりからは思いもつかない。
やすみ役で溝口に演技をつけてもらったおかげで、彼女は成長したような気がしてならない。


監督 溝口健二
脚本 成澤昌茂
企画 市川久夫
製作 永田雅一
撮影 宮川一夫
美術 水谷浩
音楽 黛敏郎

出演
若尾文子 (やすみ)
三益愛子 (ゆめ子)
町田博子 (より江)
京マチ子 (ミッキー)
木暮実千代 (ハナエ)
川上康子 (しづ子)
進藤英太郎 (店主田谷)
沢村貞子 (店主の妻)
浦辺粂子 (やり手婆)

2012.11.01

体当り殺人狂時代 1957 新東宝

浅草の禿ずらの大スター大宮デン助。
これは、彼が映画界に進出して第2作目らしい。
浅草人脈では清川虹子、坊屋三郎が共演している。
この時期の新東宝はまだコメディーを作るだけの余裕があったようだ。
監督は名匠斉藤寅次郎。


殺人事件が起きた。被害者は混血児の母であり、その子供ジョージは殺人魔の目をかすめ逃げてしまった。
ジョージは寒さから逃れて屋根の中に隠れているところを煙突掃除人の善太に保護される。
善太は町の発明家であるが、実業家の妻と別れて一人で暮らしていたのだ。
善太はジョージを我が子のように可愛がるが、そこへ善太の娘京子が訪ねてきた。
彼女は今度結婚するので母と仲直りしてくれないかと言う。
善太は結婚を祝福するが、自分から妻に折れるのは嫌だと言って断った。
ところが京子の婚約者寛平がこの殺人事件の重要参考人にされてしまう。
一方、善太とジョージは町で殺人魔矢代に見つかり、寝ているところを小屋ごと連れ去られる。
ジョージとともに小屋から命からがら逃げ出した善太は、仕方なく妻文子の元へ戻った。
しかし文子はジョージが気に入らず、追い出してしまった。
ついにジョージは矢代に捕まり、来日していたある国の国王陛下のもとへ連れて行かれる。
実はジョージの父は国王陛下のただ一人の息子で、朝鮮戦争の従軍中に亡くなっていた。


はじめは、新東宝だけにエログロかなと心配したが、さにあらず、デン助さん大活躍の巻である。
タイトルは「デン助の発明狂時代」の方がもっともらしい。
クレジットでは池内淳子が大きく扱われていたが、この作品の主役は大宮デン助でヒロイン(?)は清川虹子だ。
浅草で演じるような禿づらで、唄付きドタバタ喜劇を見事に演じている。

9つ年上の榎本健一が往年の輝きを失ってシリアス演技に傾いていた時代だから、大宮デン助のドタバタ劇は広く大衆に受け入れられたと思う。
ただし浅草オペラの時代は遠い昔のことで、飽きられるのも早かった。

その後も彼は浅草の松竹演芸場で劇団を主宰して長く活躍し、1973年に劇団解散後はテレビに本格的に進出し再びブームを呼び活躍したが、おしくも1976年になくなる。

個人的には小学生の頃に見たテレビドラマ「ぶらり信兵衞道場破り」の演技が忘れられない。
あのときは放送期間が半年の予定がヒットしたため一年に延長されデン助さんは途中から藤原釜足に交替したが、子供心にもの足りなく思ったものだ。


監督 斎藤寅次郎
脚本 中田竜雄
製作 柴田万三
撮影 友成達雄
美術 加藤雅俊
音楽 原実

出演
大宮デン助 (善太)
清川虹子 (お文)
池内淳子 (京子)
和田孝 (寛平)
小倉繁 (矢代)
坊屋三郎

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