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212.松竹(60〜79年)

2009.11.16

ゼロの焦点 1961 松竹


初めて見た能登半島。
そのなにか悲しすぎるほど、寂しい風景は
私にはあまりにも印象的だった。


松本清張の女性心理小説を映画化した作品。
後半30分以上にわたる断崖絶壁のシーンは、推理ドラマの定番になった。
最近(2009年11月)再び映画化されている。

小説では、主人公が新婚一週間で失踪した夫を捜す心理過程を丹念に描くが、
映画では登場する三人の女性を対比してドラマチックに描いている。


主演の久我美子が三人の中でもっとも年上(1931年生)である。
高千穂ひづる、有馬稲子は宝塚での同期生(1932年生)。
しかし高千穂ひづるが社長夫人を演じているため、もっとも年上に見える。

高千穂ひづるはこの作品などでブルーリボン助演女優賞を獲得している。
今から見ると、一部のシーンでコメディエンヌ的演出が過ぎて、シリアスさに欠ける。
今回の映画化で、中谷美紀がこの欠点を補ってくれると思う。

有馬稲子が助演女優賞を取るべきだった。
最後に目を開けたまま毒死するが、この演技は彼女の発案である。
有馬稲子が口ずさんだ「星の流れに」が印象的。
当時、アメリカ口語を巧みに喋る女性はパンパン扱いされたのだな。


監督:野村芳太郎
製作:保住一之助
原作:松本清張 
脚本:橋本忍 山田洋次
撮影:川又昻
音楽:芥川也寸志

出演
久我美子     (鵜原禎子)
高千穂ひづる (室田佐知子)
有馬稲子    (田沼久子)
南原宏治    (夫・鵜原憲一)
西村晃      (義兄・鵜原宗太郎)
加藤嘉     (室田儀作)
穂積隆信    (金沢での部下・本多)
十朱久雄     (仲人佐伯)
高橋とよ     (禎子の母)
沢村貞子     (宗太郎の妻)
織田政雄     (金沢署捜査主任)
桜むつ子      (立川の大隅のおばさん)
北龍二       (重役)


30年前にNHKで放送しているのを見ている。
それ以来、西村晃の毒殺シーンは忘れられなかった。
今回見直してみて、冒頭のシーンこそ記憶がぼやけていたが、
夜行列車が富山の海岸を通るシーンですっかり思い出した。


ネタバレになっている予告編。

当時ベストセラーだったため、結末をみんなが知っていたから、これでいいのだ(笑)

2008.11.12

白昼堂々 1968 松竹

野村芳太郎監督・脚色
出演:
渡辺勝次 渥美清
富田銀三 藤岡琢也
マーチ 田中邦衛
森沢刑事 有島一郎
腰石よし子 倍賞千恵子
八百橋ユキ 生田悦子

直木賞作家・結城昌治のクライムノベルを映画化した作品。
正直言って、映画の出来は、まあまあ。

当時、テレビで注目されはじめた、関西弁丸出しの藤岡琢也が、渥美清と実施的にW主演である。
でも脚本は、コミカルな渥美清の場面にウェイトを載せた方が良かった。
このキャスティングからして、犯罪映画というよりはコメディーなのだ。
そういう意味で、野村芳太郎を監督に持ってきたのも、間違っていた。
(藤岡の初の単独主演映画は1970年の『喜劇 がんばれ日本男児』。)


こんな作品の中で、とびきり輝いていたのが、倍賞千恵子だ。
寅さんのさくらとは全く違う、キュートな万引き役で出ている。
昔は、いろいろな役をこなしていたのだ。

当然彼女がヒロインかと思ったが、案外出番は少なかった。
それだけに見せ場見せ場で、しっかり目立っていた。


あと、生田悦子が若かったなあ。

この原作は1987年に、「女咲かせます」として再び松竹が森崎東監督で映画化している。
出演は松坂慶子、役所広司、田中邦衛ら。

2004.10.24

故郷 1972 松竹

山田洋次監督作品。
この人は寅さんの合間を使い、5年おきに感動的な作品を撮る。
「家族」に継ぐ、この第二作は高度成長期に故郷を捨てざるをえない人々を描く。

井川比佐志、倍賞千恵子、笠智衆主演。
渥美清前田吟も顔を揃え、山田洋次組総出演だ。
今では舞台でしか見なくなったが、弟前田吟の女房役で田島令子が出ていた。

瀬戸内海の島の話。
石を運ぶ舟を石船という。
夫が船長、妻は機関長、いつも下の娘を連れて仕事に出ている。
しかし最近エンジンの具合が悪い。
修理に出そうと棟梁のところを訪ねるが、この船はもうダメだと言われる。
夫は荒れに荒れる。
しかしやがて、船を売り尾道の造船所に働きに出る決心をする・・・

「民子、大きなもんたあ、何のことかいのう。」
「何でわしら大きなもんには勝てんのかいのう。」

ともに井川比佐志の台詞だ。

祖父が瀬戸内海の島出身だから少々わかる。
井川比佐志が石船に思い入れを持っていたというより、父祖の地を離れなければいけないことへの感傷だ。

それに個人事業者が勤め人になる気持ちもわかる。
気持ちの張りが失われる。

しかし平成大不況では誰もが井川比佐志の言葉を吐く立場になった。


2004.10.07

土方歳三 燃えよ剣(1966) 松竹

連続テレビ番組「新選組血風録」の好評を受けて、おなじ司馬遼太郎の原作を松竹が映画化した。
老舗松竹らしい薄暗いモノクロ映像だ。

主演の土方歳三にはもちろん栗塚旭
近藤勇は和崎俊哉
清川八郎に天津敏
芹沢鴨には戸上城太郎
土方のライバル七里研之助に内田良平
ヒロイン佐絵はテレビドラマ出身の小林哲子

監督は市村泰一
脚本は加藤泰、森崎東
音楽はテレビとおなじ渡辺岳夫


内田良平はテレビ版の「燃えよ剣」(東京12チャンネル、黄桜酒造提供)で主演していた。
しかし東映映画「十三人の刺客」でもそうだったが、この人の殺陣は好きではない。
腰が入ってないような気がしてならぬ。

栗塚旭は1965年NETテレビ「新選組血風録」の後、1970年にNETテレビ「燃えよ剣」でも土方歳三役で主演した。
独特なクールさが、当時は大人気だった。

テレビだと彼は格好いいが、しかし映画だとどうか?
この映画でも、土方の天然理心流時代から池田屋騒動まで、大急ぎで内容がはしょられている。
彼は一時間半の間、数分おきに見せ場があり、見栄ばかり切ってる。
これでは見てる側も飽きてしまう。
テレビだと一日の内に一度だけ十分にタメを利かせて最後に、見栄を切ればいい。
だから彼は連続テレビドラマ向けの人である。

当時はテレビ時代劇が盛んになり、テレビと映画が連携し始めた。
それだけ東映映画の時代劇スター・システムが飽きられてきた。

しかしテレビでは大河ドラマを描くことができるが、映画では時間がなくて描ききれない。
だから、映画の方はそれほど成功しなかったと思う。


2004.08.23

おとうと 1976 松竹

山根成之監督が幸田文原作・水木洋子脚本・岸恵子主演の市川崑作品をリバイバル。


主演の浅茅陽子を天下の岸恵子と比べるのは可愛そうだ。
正直言って浅茅はちょっと野暮ったかった。
どちらも役より年上に見えた。

郷ひろみ(碧郎)も演技はうまいのだが、カラー映像では病人に見えない。
肌がつやつやしている。
全く違う映画だったら良かったのだが、どうして脚本家を同じ人にしたのか?
バーニング周防社長の企画ミスだと思う。

音楽は大野雄二
当時、一世を風靡したルパン三世や犬神家の一族と似たような感じの曲だった。
何かサスペンスを見ているようで落ち着かなかった。


2004.07.30

好人好日(1961) 松竹

日本では珍しい、数学者夫婦の愛をコミカルに描く作品。
(松竹風「ビューティフルマインド」)
松山善三が脚本を書いて、渋谷実が監督した。
前年に文化勲章を受けた岡潔がモデルかと思われる。


大仏様に話しかけるという、奇妙な癖を持つ岩下志麻は奈良市役所の同僚川津祐介と相思相愛の仲である。
まずは川津の姉乙羽信子が岩下の母淡島千景を訪ね、縁談をすすめることを確認した。
岩下の心配の種は父笠智衆である。
実は両親は実の親ではない。
それだけに父は娘と離れがたく思ってる。

一方、川津も世間体を大切にする祖母北林谷栄が、実の娘でないことで反対するのではないかと恐れている。
しかし二人とも一騒動あったが、最終的に結婚に賛成してくれる。

奈良の大学の数学教授である笠が文化勲章をもらうことになり、久しぶりに夫婦で上京した。
貧乏なので学生時代の下宿に泊まることにする。
授賞式は無事終わるが、その夜、泥棒の三木のり平が下宿に現れ、勲章を盗み出した。
おかげで笠夫妻は追いつめられていく。


カラー作品。
典型的松竹家庭喜劇である。
おそらく笠智衆をイメージして松山善三が書いた脚本だろう。

前半から岩下と川津が飛ばしてしまい、後半の三木のり平菅井一郎の絡みは、今ひとつ盛り上がりきらなかった。
後半はコミカルな芝居を避け、娘と両親のシリアスなお涙頂戴に持っていった方がまとまったのではないか?

岩下志麻は前年に映画デビューして、この年既に「あの波の果てまで」の主演になり、スターの座を射止めていた。
(1958年にNHK「バス通り裏」でデビュー。)
スマートでちょうどタレ目が一番可愛らしい時期だ。
岡田茉莉子小山明子有馬稲子も彼女の清新な魅力の前では吹っ飛んでしまった。
しかし彼女も松竹家庭劇の枠に押しつけられるのを嫌って、次第に真の女優として目ざめてゆく。

淡島千景もこの年は脂が乗りきっていた。
この映画では押さえた演技をしているが、そのときの方が彼女には存在感がある。
また自分の年齢より年上を演じたときが生き生きしている。
ただ、高峰三枝子(東京の女将役)を相手に笑ってる芝居は、何故か「この二人は仲が悪いんじゃないか」と思わせるものがあった(笑)


2004.06.24

悪人志願 1960 松竹

名脚本家田村孟の唯一の監督作品。
松竹ヌーベルバーグのスター炎加世子主演。
渡辺文雄津川雅彦共演。
白黒映画である。


地方の小都市の、飯場が舞台だ。
県議の次男坊津川雅彦は、兄を心中事件で失っている。
その心中の生き残りが炎加世子だ。
津川は炎を憎み、嫌がらせを続ける。
一方、炎はどもりの作業員渡辺文雄と結ばれるが、心までは許さない。

実は津川も炎を愛していた。
炎がこの町を出て行くと言ったとき、津川はこの町に残ってくれと嘆願するが、断られる・・・

---

身内の心中相手を愛してしまう。
おしゃれな若者映画なら今でも通用する主題だが、
親父世代の俳優として見慣れた津川雅彦渡辺文雄がやっていると、
われわれの世代にとしては、少し違和感があった。

また、俳優全体にやる気を感じなかった。
いかにも「演技でアクションしてます」という感じだ。これも演出だろうか?

炎加世子は演出のせいか、大島渚監督「太陽の墓場」ほどのエネルギー感はなかった。
しかし演技力は若干向上していると思った。

津川雅彦の妹役月丘昌美は妙に大人っぽかった。と言うか、子どもらしさに欠ける。

監督田村孟は東大文学部卒、当時は松竹の社員であった。
大島渚監督の脚本を中心に、長谷川和彦監督の「青春の殺人者」、篠田正浩監督の「瀬戸内少年野球団」の脚本も手がける。
この映画だけでは監督として才能があるかどうか、わからないが、本人は二度とメガホンを取らなかった。


2004.06.15

太陽の墓場 1960 松竹

セックスする時が最高よ」を流行語にした女優炎加世子が主演。
大島渚監督作品。
脚本は石堂淑朗大島渚の共同脚本。
当時劇場でヒットして、大島ファンには評価が高い作品だ。
ドヤ街というテーマから見て、プログラムピクチャーとは思えない。
監督の希望はかなり通ったのではないか?
しかも出演者の多彩さを見ると、松竹の城戸四郎社長も大盤振る舞いしたと考えられる。

炎加世子は良いとして、佐々木功はどうだったのか?
佐々木功はリーゼント歌手としては人気者だったし、まあ「御法度」でも松田龍平を抜擢した人だから、案外監督の指名かもしれない。
彼は演技に関しては問題ありだったが、カメラワークでうまく撮ってた。
二人はともに映画デビュー間無しだった。

出演者が素人臭い演技をするのは、後の大島作品でも見られた。
しかし最後のクライマックスに至る重要な場面で、羅生門綱五郎の台詞が聞き取れない。
どうしてNGにならなかったのか?

なぜ釜ヶ崎萩ノ茶屋)を舞台に選んだのかも、わからない。
下手な大阪弁は関西人には聞くに堪えない。
東京の山谷でも良かったはずだ。

東映は今井正監督で「純愛物語」を撮っているではないか。
60年安保との対称性(学生運動とドヤ街のギャップ)をフィーチャーしたいがために、大阪に舞台を持っていったのであろうか?

東京では派手な学生運動があるけれど、大阪ではみんな毎日の生活に必死だ。
若者がここから抜け出そうとして派手なことをやろうとしても、周りに足を引っ張られるのが落ち。
下手すれば翌朝川に浮かんでいる。

どっちにしろこの映画の完成で松竹上層部大島渚の思惑の食い違いがあったはず。
それが同年の「日本の夜と霧」、三日で上映打ち切り事件に繋がると勝手に思っている。

炎加世子松竹ヌーベルバーグのマドンナの一人。
上半身背中ヌードポスターなど扇情的なキャラクターで、演技云々ではない何かを持った人だ。
芸能界から離れてどうしたんだろう。

http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD23154/index.html

釜ヶ崎についてはここ。
http://www.npokama.org/

良くも集めた曲者俳優の皆さん・・・みんな汗かいてた
津川雅彦 (信栄会の若き親分・信)
炎加世子 (花子、地下血液銀行の元締め)
佐々木功 (若い信栄会チンピラ武)
戸浦六宏 (信栄会のナンバー2・マサ)
川津祐介 (信栄会ヤス、内紛で殺される)
伴淳三郎 (寄せ松、花子の父)
渡辺文雄 (三国人・寄せ平)
藤原釜足 (戸籍を売ったバタ助)
北林谷栄 (バタ助の女房ちか、今回は色っぽい役だ)
小沢栄太郎 (軍人上がりの動乱屋、剃り込みが入った小沢栄太郎を初めて見た)
小池朝雄 (戸籍の売人・色目鏡、動乱屋と組む)
羅生門 (戸籍を売られた大男)
浜村純 (もぐりの医師・村田吾郎)
佐藤慶 (本職の医師坂口、次第に悪の道に入っていく)
清水元 (大浜組の親分)
永井一郎 (ヤリ、波平さんの声優として有名。俳優しているのを初めて見た)
小松方正 (ルンペン)
田中邦衛 (追われて腕の骨を折る泥棒)
富永ユキ (犯された女学生、後に武に復讐に来て失敗し殺される)
左卜全 (バタ屋=廃品回収業者)


2004.06.11

彼女だけが知っている 1960 松竹

一連の松竹犯罪映画の一つ。
初期松竹ヌーベルバーグでもある。
小山明子のまだ青い魅力が炸裂!
今度は明子ちゃんが連続レイプ犯の毒牙に掛かる。
そのレイプ犯は父や恋人の刑事が追っている男だった。

筋書きはgooで見てもらうことにして、
配役は笠智衆が刑事の父、
水戸光子はやさしい母、
渡辺文雄は刑事の下っ端で明子の婚約者。

笠智衆にサスペンスや警察ものは不向きだ。
水戸光子は当時、日本の代表的母になってたと思う。
渡辺文雄は先輩の高橋治監督に可愛がられていた。
捜査一課長に松本克平
とくに鑑識課長三井弘次は良かった。
酔っぱらいのシーンはなかったけど。


高橋治監督(東大文学部卒)
田村孟脚本(デビュー作だから、個性は出ていない。)
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD28455/index.html


2004.04.11

吸血鬼ゴケミドロ 1968 松竹

監督 : 佐藤肇
製作 : 猪股尭
脚本 : 高久進 / 小林久三
配役:
吉田輝雄 (コパイロット 杉坂英)
佐藤友美 (スチュワーデス朝倉かずみ)◎
北村英三 (国会議員真野剛造)
高橋昌也 (宇宙生物学者佐賀敏行)
高英男 (テロリスト寺岡博文)
楠侑子 (徳安法子)
金子信雄 (徳安)


松竹の超カルト怪奇映画。
前頭葉から穴をこじ開けて人体を乗っ取るエイリアン。
襲われた人間は吸血鬼になってしまい、次々と人を襲う。
うーん、実に分かりやすい。

飛行機が正体不明の海岸に不時着した。
乗っていたテロリストは人質を連れて逃げる。
しかしテロリストはUFOに遭遇し、エイリアンに体を乗っ取られてしまう。
一方、残された飛行機内部でも仲間割れが起きていた・・・

最後、これだけどこに不時着したかわからないと言っていたのに、意外と簡単に人里に帰って来る。
それだったら最初から気づけよと突っ込みたくなる。
しかしゴケミドロに既に地球は○○されていたという、ありがちなオチだ。

個性豊かな俳優陣が頑張っていて、このように突っ込みどころも豊富。
見ていて実に飽きない作品に仕上がっている。

ただしどことなく東映映画に似ている気がした。
何もない野原でアクション映画を撮ると、何でも東映映画に見えてしまう。


楠侑子は「赤い殺意」から時間が経っていて、おばさんになっていた。残念だ。

佐藤友美はこの頃凄い美人だった。
演技力は酷かったが、スタイルは良かった。
 


「雪の降る街を」で知られるシャンソン歌手高英男が怪演だ。
派手な顔のテロリストってだけで笑えるのに、眼の間に上に真っ赤な傷口とは、参ったな。


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