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書籍(映画・音楽)

2007.01.29

李香蘭私の半生 山口淑子・藤原作弥著 新潮文庫

ドラマや劇団四季のミュージカルでお馴染みの、李香蘭半生記だ。

中国生まれの日本人山口淑子が、満映の中国人女優・李香蘭として抜擢される。
彼女は親日的な満州映画だけでなく、日本映画でも大活躍する。
しかし終戦後、上海で囚われ漢奸裁判(親日派の中国人が裁かれた。)の被告になる。
自分は日本人の山口淑子であることを告白して、罪を許される。

ドラマよりも抑えめの表現である。
個人的なことより、周囲の満州に関わった人のその後がショッキングだった。
撫順事件では、イラクでのアメリカ軍と同じ事を、関東軍がやっていたことを思い知らされる。
居残り軍は、どこの国も同じだ。
欲求不満の塊で、ゲリラの抵抗に対してその何十倍も報復をする。
被害を受けるのは、非戦闘員とくに罪のない女子供だ。

李香蘭とソ連のボルシェビキが、関係していたのには驚かされた。
ボルシェビキのおかげで、山口淑子が助かったと言っても過言ではない。

川島芳子や満州皇室との関係も興味深い。
内田吐夢監督は、甘粕正彦満映理事長(もと憲兵大尉、甘粕事件の犯人)の自殺の現場に立ち会っていたのも初めて知った。

山口淑子は日本国籍を持ってはいても、その心は中国人である。
日本のような狭い国では、じっとはしていられない。
戦後、帰国してからアメリカへ渡った。
二度の結婚後、女優を引退しても「三時のあなた」の司会として世界各国を飛び回った。
日中国交正常化の現場に立ち会ったり、赤軍派の重信房子(当時海外逃亡していた)と会見した。
あげくに参議院議員にまでなってしまった。

かなりバタ臭い美人だったため、女優としては好きではなかったが、「三時のあなた」の司会としては扇千景より好きだった。


2007.01.27

女優ベスト150 文藝春秋編 文春文庫

10年以上前の古本である。
アマゾンマーケットプレイスで買った。
業界の有名人から無名な一般人にまでアンケートを採って、日本と世界の映画女優それぞれ上位75名を取り上げている。

日本人のトップは、昭和20年代に活躍した久我美子だった。
当時60歳ぐらい。今は70歳ぐらいの人を中心にしたアンケートだろう。
続いて2位高峰秀子、3位吉永小百合、4位原節子、5位桂木洋子

桑野通子市川春代も上位に入っている。
彼女らに投票した人は、今は80歳代か。

松竹の有田紀子(「野菊のごとき君なりき」)や、東宝の杉葉子(「青い山脈」)など、(失礼な言い方だが)一発屋美女も上位に食い込んでいる。
女優は男優と違い、一本でも大ヒット映画に出ていれば、印象に残る。
(杉葉子は後に成瀬巳喜男作品など、いろいろな名作に出ている。)

俺の好きな芦川いづみは6位。
浅丘ルリ子が17位、北原美枝が20位だから、目の確かな人が多い。

世界編では、フランス女優がもてもてだ。
1位がフランソワーズ・アルヌール、3位がコリンヌ・ルシェール、5位がアナベラ
6位がアヌク・エーメ、7位がマリナ・ヴラディ、8位がダニエル・ダリュー
ベストテンの内、6人がフランス系だ。

なお他には、2位オードリー・ヘップバーン、4位イングリッド・バーグマン、9位ビビアン・リー。
純粋なアメリカ人は10位のゲイル・ラッセルだけ。

この世代は、フランス映画ファンが多いとわかる。
フランスは第二次大戦中にドイツの傀儡政権ができて、日本の同盟国とみなされていた。
戦中派は、そんなフランス映画を愛した。

僕の好きなアメリカ女優テレサ・ライトは13位に入っている。
似たタイプのディアナ・ダービンも17位に入っている。
当時のアメリカ映画ファンは、ロリコンだった(笑)


2007.01.23

わたしの渡世日記(下)高峰秀子 文春文庫

上巻に続き、終戦後からフランス逃亡を経て、高峰秀子が結婚する昭和30年までのお話。

昭和24年ごろの写真はなまめかしい。
色気づいたのであろう。
実際つきあってた人が、いたようだ。

折り合いの悪い義母や、恋人と別れたくなり、「カルメン故郷に帰る」の撮影が終わるやいなや、フランスへ一人で旅立つ。
すっかり日本での生活を清算したかにみえた。
しかし日本に帰るや、また仕事仕事の毎日。

三十歳までに結婚したいと焦っていた。
木下恵介「二十四の瞳」の撮影で知り合った、松山善三と仲良くなり婚約する。
成瀬巳喜男監督「浮雲」の撮影が終わると、質素な結婚式を挙げた。

これが女優の筆致か。
うますぎる。
ちょっと自虐的で、照れ隠しで舌を出している。
彼女の演技その物だ。
女優の自伝として読み始めたが、いくらでも読み続けていたい本だ。

映画化してくれないだろうか。
何とかお願いしたい。

わたしの渡世日記(上) 高峰秀子 文春文庫

高峰秀子の自伝的エッセイ(戦前編)である。
高峰ファンが読んで楽しむのは当然だ。
そうでない人も、当事者が語る映画史として読むと、かなり楽しめる。

高峰ファンならよく知ってる通り、彼女はクールな人である。
涙なんて、この人には似合わない。
その人格形成がいかになされたかも、この本からわかり、実に興味深い。


高峰は北海道の出身である。
しかし東京に養子に出される。
東京の養母の家も裕福ではなかった。

そこで松竹の子役に応募したら、見事合格してしまう。
人気子役になった彼女は、東海林太郎夫妻から養子に欲しいと求められる。
数年間共に暮らすが、結局彼らの溺愛を受け入れられず飛び出してしまう。
松竹時代は田中絹代に可愛がられる。
しかし養母と松竹の折り合いが悪かった。

宝塚へ入ろうかと思った時期もあったが、1937年藤本真澄の誘いで東宝へ移籍する。
東宝では黒澤明に淡い恋心を抱くが、スターと助監督の恋が実るわけはない。

戦争末期、慰問で軍を訪ね、「同期の桜」を歌う。
目の前で共に歌った若い兵隊は、特攻隊として散っていった。

彼女がいかに爺さんのアイドルだったかは、有名人とのエピソードでわかる。
谷崎潤一郎に新村出を紹介され、お宅へ伺うと、広辞苑の編者は部屋中に彼女のグラビアやポスターを貼り付けていたそうだ。

2004.10.11

吹替映画大辞典 とりみき 三一書房

吹き替えの王道を行く本だ。
有名声優20人をフィーチャーして、インタービューを取っている。

メンツは以下の通り。
広川太一郎(トニー・カーチス、ロジャー・ムーア他ハチャメチャ系)、
羽佐間道夫(ロイ・シャイダー他ハチャメチャ系だが皇室御用達)、
野沢那智(アラン・ドロン)、
中村正(デビッド・ニーブン、「奥様は魔女」のオープニングナレーション)、矢島正明(ロバート・ボーン他UFO番組のナレーション)、
大塚周夫(ネズミ男)、
森山周一郎(刑事コジャック)、
山田康雄(クリント・イーストウッド、ルパン三世)、
納谷悟郎(チャールトン・ヘストン、銭形警部)、
池田昌子(オードリー・ヘップバーン)、
向井真理子(マリリン・モンロー)、
小原乃梨子(ジェーン・フォンダ、のび太)、
富田耕生(アーネスト・ボーグナイン、二代目バカボンのパパ)、
田中信夫(シドニー・ポワチエ、探検隊もののナレーション)、
内海賢二(二代目スティーブ・マックイーン、則巻千兵衛)、
黒澤良(ゲイリー・クーパー)、
久米明(ハンフリー・ボガード)、
城達也(グレゴリー・ペック)、
小林昭二(ジョン・ウェイン)、
若山弦蔵(ショーン・コネリー)。

死んだ人も多く、その場合は友人代表にお願いしてる。
額田やえ子(吹き替え脚本作家)に対して、ロングインタビューも試みている。

素晴らしい内容なのだが、ちょっと物足りない点があった。
著者が女流漫画家だからだ、と思うが、おばさん役の声優を無視している。
サザエさんの舟さんでありロッテンマイヤーさんでもある、(麻生美代子)は映画の吹き替えでも偉大な人ではないのか?

ちょうど「クリスタル殺人事件」を吹き替えでやっていた。
アンジェラ・ラズベリーが高橋和枝である。
森光子がアンジェラを当てた「murder,I wrote」のおかげで森=アンジェラになってるようだが、あの顔は高橋がやるべきだと思う。
ルシル・ポールにしたってそうだ。
高橋が亡くなったから、今さら仕方がないのだが。

納谷悟郎が若い声で、エドワード・フォックスを当てていた。
あれは二十年前の吹き替えだ。
今では無理だろうな。

2004.09.20

映画の真実 佐藤忠男 中公新書

黒澤作品とアジア映画中心に紹介している。
映画論ではなく、映画を通した認識・歴史・社会論である。

映画のリアリティとは何だ?
美化された結果ではないのか?
しかし美化も真実なのだという。

羅生門」は、客観の不存在を描いている。
そして主観は、それぞれの自尊心の反映である。

歴史観は、映画はどうゆがめたか?
七人の侍」と「郡上一揆」を取り上げる。
江戸時代には、百姓は強い自治能力を持っていた。
したがって「郡上一揆」こそが、”正しい”映画である。

近代のヤクザ映画は、江戸時代には現実だった。
民衆は自治を行っていたのである。
侍は人数で負けているから、それに口出しはできなかったのだ。
その封建体制を明治維新が崩したため、そういう部分は歴史の闇に隠れてしまう。
そこでヤクザの名を借りて、「江戸時代の庶民」映画を作っているのである。

他にインドの恋愛映画、反グローバリズムのイラン映画、日中反戦映画、映画による国際理解、ドキュメンタリー論などを話題にする。

佐藤忠男は、日本映画学校の校長。
この先生は、文章は難解だが、ほんとうによくご存知だ。
NHKで難しそうな顔をしてるところしか見たことがないので、怖い先生だと思う。
是非、アジア映画評論の後継者を育ててもらいたい。

最後に武士道について。
黒沢映画「生きる」の主人公・渡邊課長こそ真のサムライである。
癌であと半年とわかった日から生き甲斐を探し、公園作りに命を賭ける。
そしてブランコに乗って死んでいく姿こそ、武士道である。
武士道とは、死ぬことと見つけたり。
まさに我が意を得たり。

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